この場合は労災?労災の基本知識について
今回のテーマは【この場合は労災?労災の基本知識について】
従業員様が業務中にケガをした場合、交通事故にあった場合、しっかりとした対応と正確な手続きが必要になります。
誤った対応を取ってしまうと、労災隠しとみなされ罰せられるケースもあります。労災基本知識について今回は簡単にご紹介いたします。
■労災保険とは・・・
労災保険(労働者災害補償保険制度)は、労働者が業務中や通勤途中に起きた事故や労働災害によるケガ、病気、障害、死亡に対して、
必要な保険給付を行う制度です。治療費や休業期間中の補償、被災労働者の社会復帰の促進や当該労働者遺族の援護等を図ることが目的とされています。
【原因・事由】 【災害分類】
仕事によるもの → 業務災害
〃 → 複数業務要因災害
通勤によるもの → 通勤災害
■業務災害
業務災害とは、労働者が業務を原因として被った負傷、疾病、障害または死亡のことをいいます。業務災害と認められるには、
業務と傷病等の間に一定の因果関係があることが必要で前提条件として、「労働関係のもとで起きた災害」と認められなければなりません。
≪業務上の負傷について≫
①事業主の支配・管理下にあるが業務に従事している場合
→所定労働時間内や残業時間内に事業施設内において業務に従事している場合が該当。
この場合の災害は、被災した労働者の業務としての行為や事業場の施設・設備の管理状況など が原因となって
発生するものと考えられるので、特段の事情がない限り、業務災害と認められます。
※労働者が故意に災害を発生させた場合などは業務災害とは認められません。
②事業主の支配・管理下にあるが業務に従事していない場合
→昼休みや就業時間前後に事業場施設内にいて業務従事していない場合が該当。出勤して事業場施設内にいる限り、
労働契約に基づき事業主の支配・管理下にあるが、休憩時間や就業前後は実際に業務をしてはいないため、
この時間に私的な行為によって発生した災害は業務災害とは認められませんが、
事業場の施設・設備や管理状況などが原因で発生した災害は業務災害となります。
③事業主の支配下にあるが、管理下を離れて業務に従事している場合
→出張や社内での外出などにより事業場施設外で業務に従事している場合が該当。
事業主の管理下を離れてはいるものの、労働契約に基づき事業主の命令を受けて仕事をしているときは
事業主の支配下にあることになり、この場合積極的な私的行為を行うなど特段の事 情がない限り、一般的には業務災害と認められます。
■複数業務要因災害
複数業務要因災害とは、複数事業労働者の二以上の事業の業務を要因とする傷病等のことで、対象となる傷病等は脳・心臓疾患や精神障害など。
※複数事業労働者とは
複数事業労働者とは、傷病等が生じた時点において、事業主が同一でない複数の事業場に同時に使用されている労働者。
労働者として就業しつつ、同時に労働者以外の働き方で就業している者については、複数事業労働者に該当しません。
また、転職等、複数の事業場に同時に使用されていない者についても、複数事業労働者には該当しません。
≪複数の事業の業務を要因とする傷病等とは≫
複数の事業場の業務上の負荷(労働時間やストレス等)を総合的に評価して、労災と認定できるか判断され、
複数事業労働者の方でも、1つの事業場のみの業務上の負荷を評価し業務上と認められる場合はこれまで通り業務災害として労災認定されます。
■通勤災害
通勤災害とは、通勤によって労働者が被った傷病等のこと。この場合の「通勤」とは、就業に関し、
①住居と就業の場所との間の往復
②就業の場所から他の就業の場所への移動
③単身赴任先住居と帰省先住居との間の移動 を、
合理的な経路および方法で行うことをいいます。移動の経路を逸脱し、または中断した場合には、
逸脱または中断の間およびその後の移動は「通勤」とはなりませんが、例外的に認められた行為で逸脱または中断した場合には、
その後の移動は「通勤」となる場合もございます。 通勤災害と認められるためには、その前提として、
①から③までの移動が労災保険法における通勤の要件を満たしていることが必要です。
※「住居」:労働者が居住している家屋などの場所で、本人の就業のための拠点となるところ
※「就業の場所」:業務を開始し、または終了する場所
※「逸脱」:通勤の途中で就業や通勤と関係のない目的で合理的な経路をそれること。
※「中断」:通勤の経路上で通勤と関係のない行為を行うこと
→具体的には、通勤の途中で映画館に入る場合、飲酒する場合などがありますが、通勤の途中で経路近くの公衆トイレを使用する場合や
経路上の店でタバコやジュース を購入する場合などのささいな行為を行う場合には、逸脱、中断とはなりません。
※「合理的な経路および方法」:移動を行う場合に、一般に労働者が用いると認められる経 路および方法
→「合理的な経路」については、通勤のために通常利用する経路が複数ある場合、それらの経路はいずれも合理的な経路となります。
また、当日の交通事情により迂回した経路、マイカー通勤者が駐車場を経由して通る経路など、通勤のためにやむを得ず通る経路も
合理的な経路となりますが、合理的な理由もなく、著しく遠回りとなる経路をとる場合は、合理的な経路とはなりません。
■もし業務中に従業員がケガをしてしまったら・・・
≪従業員≫
・近くの労災指定病院で受診(近くに労災指定病院がない場合は労災指定外病院でも可)
※保険証は提出せず(健康保険対応ではないため)に、病院の窓口で状況の説明(労災である旨)をお伝えください。
※労災指定病院での受診の場合、基本的に窓口でお金を払うことなく無料で療養を受けられます。
(病院によっては一度被災者で立替、後日書類の提出時に返還される場合もあり)。
労災指定病院以外の病院での受診の場合は一旦全額療養費を立替え、後日労基署への書類提出を以て療養費が支給されます。
≪会社側≫
・労災書類のどのパターンにあたるかを正確に判断し、適正な手続きを進める
※被災者が一時的に療養費を立替える場合もありますので、病院や労基署への書類提出は早めの手続きをお勧めします。
◆最後に・・・
今回は労災保険についてご紹介しました。従業員様の急なケガにもスムーズに対応・手続きができるように、
ご担当者様は前もって準備をしておきましょう。手続き書類の作成や計算の仕方等にお困りの際はぜひ、
この機会に当事務所へご相談ください。お気軽にご連絡いただけたらと思います。